生産数が少なく、あまり目にしない珍しい「懐中時計」その歴史や種類、使い方をご紹介いたします。

懐中時計を持つ男性 イメージ懐中時計とは

懐中時計は英語でポケットウォッチと呼ばれるように、スーツのポケットなどに入れて使用する時計のことです。

懐中時計の歴史

懐中時計の歴史は、とても永く、17世紀(1600年代)にはすでに懐中時計が使用されていた記録が残されています。当時は、懐中時計を作れる時計技師がごく少数であったため、ごく一部の王侯貴族が持つ高級品とされていました。

しかし時計技術の発達,一定のクオリティでの生産体制の確立により、市場への安定した製造と供給になり、 時代とともに多くの人々の手に渡るようになりました。 100年以上続いている歴史を持つブランドなどは、懐中時計が原点であり、現在も懐中時計の製造、販売を手がけているブランドも少数ですが存在します。

日本における懐中時計の歴史

当初はやはり海外から伝わってきました。 その中で、歴史上の有名な人物が愛用された記録も残っています。

  • 1860年、江戸時代に渡米した幕府の使節団を通し、 アメリカのブキャナン大統領 から14代将軍、徳川家茂に贈られたウォルサム懐中時計
  • 1869年に薩摩藩主、島津忠義が西郷隆盛に贈ったロンジンの金時計

この後、1879年(明治12年)に大野規周氏の高弟、大野徳三郎氏が懐中時計の 機械および側を手工で製作したのが日本で初めて生産された懐中時計と言われています。やがて、日本でも時計ブランドが立ち上がり、懐中時計が日本国内で製造、販売されるようになりました。

懐中時計を親しむ人々 鉄道イメージ

一言で言えば、懐中時計はロマンがあります。携帯電話、スマートフォンにはないファッション性やこだわりが強く感じられます。古いアメリカ西部のワークマンやレイルマン(鉄道員)ファッションの重要アイテムとしても人気があります。

他の人とは違うものを持ちたい。ただ時間を見るのはつまらない。そんな方々に、懐中時計は長く愛され続けています。

"高品質なものは芸術の域にも達する"

懐中時計はその装飾の美しさ、昔ながらのロービートなムーブメント(中の機械)も魅力の一つ。 様々なデザイン・ムーブメントが存在するため、世界中に多くのコレクターも存在します。 この場合、「時間を見る道具」というよりも「芸術品を見る」という目的で集められる方が多いです。

「他の人とは違うものを持ちたい。」

「ただ時間を見るのはつまらない。」

そんな方々に、懐中時計は長く愛され続けています。

また、金属アレルギーの方、仕事上腕時計を着用できない方にとっては欠かせないものとなっております。鉄道時計やナースウォッチであれば職務上の携帯品として古くから支持されている懐中時計もございます。

懐中時計の形・種類

懐中時計の形には下記の通り4つの形があります。

オープンフェイス 懐中時計

オープンフェイス

ケースにフタがないタイプの懐中時計。ポケットから取り出した時、瞬時に時間が確認できます。ホコリが内部に入りにくい構造をしているため「長く使いたい」方にお勧めのタイプです。

オープンフェイス 懐中時計

ハンターケース

懐中時計の風防(ガラス)を守るために、ケースにフタが付いたタイプ。映画で使用される懐中時計のような、雰囲気を味わいたい方に人気。

オープンフェイス 懐中時計

ハーフハンターケース(デミハンター・ナポレオン)

上記のハンターケースのフタに、丸い穴を開け、ガラスをはめ込んだタイプ。フタを閉じたままでも時間が確認できるように、フタにも12時間表示が付けられているものが多いです。

オープンフェイス 懐中時計

スケルトン

文字盤やケースにガラスを使用し、中のムーブメントが見えるようにしたタイプ。他の懐中時計と違い中のムーブメントにも装飾が施されているものが多く、高級懐中時計によく見られます。電池で動くクォーツ懐中時計にはない、機械式懐中時計だけの魅力があります。

専門的な職業に携わる方々に対応した、個性的な懐中時計もあります。

オープンフェイス 懐中時計

鉄道時計

強い磁力でも影響されない加工や視認性が高いことから、実際に鉄道職員の方に使用している懐中時計です。鉄道時計ファンや、抜群の視認性から、年配の方・初めて懐中時計を持つ方への贈り物に人気です。

オープンフェイス 懐中時計

ナースウォッチ(ナース時計)

文字盤にパルスメーター(脈拍計測に使用するメーター)や、クリップなどで固定して使うために、6時方向にリューズがある懐中時計。蓄光やカレンダーなども付いているため、看護師の方への贈り物に支持されています。

日常での使い方

懐中時計の使用に大きく関わってくるのが蓋のあるなしです。

その理由としては、懐中時計は基本的にポケットに入れますが、どんなに清潔にしていてもポケットの中にホコリが入り込んでいます。細かいホコリは時計内部に侵入することがあります。特に蓋ありの時計の場合、蓋と時計本体をつないでいる蝶番(ちょうつがい)や蓋を留める部分から入りやすいです。

日常での使い方 

蓋ありの懐中時計の開け閉めについての注意

蓋ありの懐中時計は蓋を開閉するとき、リューズにあるボタンを押し蓋を開くのですが、実は蓋を閉じる時も開く時と同様にリューズのボタンを押す必要があります。

蓋を留める部分はパチンッと音を立てて閉じると、その部分が摩耗したり、変形などして噛み合わなくなり、蓋を閉じることができなくなってしまいます。

使い方次第で起こりえる故障なので、懐中時計と長くお付き合いしていただくためにも、正しい使い方を御心がけてくださいませ。

そして懐中時計をポケットに入れる際、なるべく鍵や携帯電話などと一緒に入れないようにお心がけください。一緒に入れてしまうことにより、携帯電話の影響で磁気帯びしてしまったり、大切な時計が傷だらけになってしまう恐れがあるからです。

入れるポケットの場所は一番はベストのポケット、スーツの裏地の胸ポケット、スーツの胸ポケット、サイドポケット、など、ポケット部分が動きにくい部分からを、お選びいただくのが好ましいです。

日常での使い方

また、ポケットへ収納するときのコツとして、チェーン部分は外へ出しておくのと、見た目の格好良さだけでなく、チェーンと時計本体がこすれてキズが付いてしまう事を避けるメリットもあります。

チェーン、紐を結んでいないとポケットや手のひらから落としてしまう可能性は高くなります。何も着けないよりはチェーンや紐を結んでおく方が、やはり安全です。

ポケットから時計を取り出す際、チェーンを引っ張って取り出してしまうと、リューズの外周にある輪っか「かん」という部品が壊れてしまう原因になります。懐中時計をポケットから出すときは、チェーンを引っ張るのではなく本体をしっかり持って出す事がお勧めです。

懐中時計の取り扱いについての動画はこちら
懐中時計の選び方

実用品として使用される場合

機械式またはクォーツ式のどちらを選んでも問題はありません。持ち歩かれるのであれば、中身よりもケースに蓋がついているかいないかが注意するポイントになります。

懐中時計を飾られる場合

目で見て楽しめる機械式時計のスケルトンタイプがでおすすめです。持ち歩かれることもあるかと思いますが、機械式時計の魅力をより堪能するために、インテリアとして置かれるのもおすすめです。趣のある書斎などに飾られると、より空間をおしゃれにしてくれるでしょう。

贈り物に選ばれる場合

上記のことを踏まえつつ、お相手のことを考えてお選びください。例えば高齢の方の場合、指先でゼンマイを巻く必要がある手巻き式は敬遠される事が多く、アラビア数字文字盤で時刻を確認しやすいクォーツ懐中時計をお選びいただく傾向があります。

ただずっとゼンマイを巻き忘れてしまわれる方や精度を気にされる方には、機械式懐中時計は不向きです。ゼンマイを巻かず、長い間放置しておくと機械の油分が固まるなど故障の原因にもなりますし、精度はクォーツ式より若干劣ってしまいます。そういった方々には手間のかからないクォーツ式をおすすめいたします。手巻き懐中時計はどちらかといえば玄人向きかもしれません。

銀無垢素材について 銀無垢の懐中時計

シルバーを92.5%使用している時計は「銀無垢」と呼ばれており、ケースに「SILVER925」など銀無垢であることが刻印されています。銀無垢はメッキやステンレスに比べ、独特の白い輝きが特徴的で高級な素材として、記念品などの贈り物によく選ばれております。

シルバーはステンレスと比べると柔らかくできており、傷やへこみなど発生しやすくなっています。 また10円玉硬貨のように空気に触れることにより酸化していきます。メンテナンスとしては、銀磨きクロスなどで定期的に磨き上げることで、特有の白い輝きを維持することができます。

それとは逆に時とともに鈍色に変化し、アンティークな風合いを楽しめるのも銀無垢の魅力です。あまり磨かず、変化していく様子を見守るのも長く付き合う上で楽しみになってくるでしょう。

銀は高級な素材ですが、もう少しリーズナブルなものをお探しの方は、見た目には銀無垢に見える、シルバーでコーティングした「銀仕上げ」も存在します。 コーティングといいましても、磨いたくらいで下地が出るということはよっぽどのこと(強くぶつけたり、ヤスリ等で削る等)がない限りございません。長く使うために、こだわりの素材をお選びください。

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